ボーダーレスな環境で世界基準のリーダーシップ教育を——グローバル視点で見る立教経営
Miikka J Lehtonen 特任准教授、Thomas Brotherhood 助教、村嶋 美穂 助教、井石 萌佑理 さん、山本 帆夏 さん
2022/09/12
立教経営の学び
OVERVIEW
2022年「世界時価総額ランキング」50位以内の日本企業はトヨタのみ──。こうした結果が示すように、今、世界における日本企業の存在感は、どんどん低下しています。その変化にひそむ要因とは、いったい何なのか。そして、若者が将来グローバルに活躍するうえで、立教経営はどのような価値を提供するのか。教師陣と学生たちが論を交えました。
写真左から:Miikka J Lehtonen 特任准教授、井石 萌佑理 さん、山本 帆夏 さん、Thomas Brotherhood 助教、村嶋 美穂 助教
プロフィール
Miikka J Lehtonen 特任准教授
研究分野・キーワード:戦略的デザイン、エコシステム、創造産業 等
Thomas Brotherhood 助教
研究分野・キーワード:高等教育、移民労働者、労働力 等
村嶋 美穂 助教
研究分野・キーワード:企業と社会、CSR、開発経済学 等
井石 萌佑理 さん
国際経営学科 4年/Parkland Secondary School 出身
山本 帆夏 さん
国際経営学科 3年/神戸市立葺合高等学校 出身
研究分野・キーワード:戦略的デザイン、エコシステム、創造産業 等
Thomas Brotherhood 助教
研究分野・キーワード:高等教育、移民労働者、労働力 等
村嶋 美穂 助教
研究分野・キーワード:企業と社会、CSR、開発経済学 等
井石 萌佑理 さん
国際経営学科 4年/Parkland Secondary School 出身
山本 帆夏 さん
国際経営学科 3年/神戸市立葺合高等学校 出身
Theme1 グローバル市場における日本企業の特徴と課題
Thomas Brotherhood 助教
Brotherhood 先生
日本企業は、国内のニーズに応え、安定したマーケットを形成することは得意です。しかし海外市場にアプローチすることはあまり得意ではないようですね。
Lehtonen 先生
今の世界は複雑で不透明、不確実。その中で企業は価値を生み出さなければなりません。日本の企業は、どこか「変わりたくない」と思っているように見えます。一方で、同時に、日本に暮らす一人ひとりは、変化を求めているようにも感じます。
山本さん
なるほど、そうですね。例えば、労働環境でいえば個々人は「もっとフレキシブルに働きたい」といったように。
Lehtonen 先生
そのとおりです。ですから、個人と企業、お互いのタレントをもっといかすことが重要ですね。私が注目しているのは、人間中心主義という考え方です。個人の「変えたい・変わりたい」という意思に、企業が上手くアプローチすることで、日本社会はもっと素晴らしいものになると思います。
日本企業は、国内のニーズに応え、安定したマーケットを形成することは得意です。しかし海外市場にアプローチすることはあまり得意ではないようですね。
Lehtonen 先生
今の世界は複雑で不透明、不確実。その中で企業は価値を生み出さなければなりません。日本の企業は、どこか「変わりたくない」と思っているように見えます。一方で、同時に、日本に暮らす一人ひとりは、変化を求めているようにも感じます。
山本さん
なるほど、そうですね。例えば、労働環境でいえば個々人は「もっとフレキシブルに働きたい」といったように。
Lehtonen 先生
そのとおりです。ですから、個人と企業、お互いのタレントをもっといかすことが重要ですね。私が注目しているのは、人間中心主義という考え方です。個人の「変えたい・変わりたい」という意思に、企業が上手くアプローチすることで、日本社会はもっと素晴らしいものになると思います。
村嶋 美穂 助教
村嶋 先生
私の専門である、企業の社会的責任(=CSR)やESG、サスティナビリティの観点からお話しすると、日本企業の課題は3点挙げられます。1つ目は、社会的取組みに関し欧米の後追いになってしまっていることです。2つ目が、ダイバーシティ。自分と異なる考え方の人を取り込み、多様な意見を聞く。そういうことができれば、おのずと企業価値も上がっていくでしょう。そして3つ目は、日本では社会問題解決のための起業、すなわち社会的起業が圧倒的に少ないことです。制度、環境、教育など、多方面において起業へのハードルがもっと低くなると良いと思います。
山本さん
先生がおっしゃるダイバーシティの難しさは、少し実感している部分があります。COBBYという学部公認の留学生支援団体に所属していますが、その活動の中で、さまざまな国の留学生と交流する機会があります。連絡ひとつとってもみんなの反応が全く違って……。でも、こうしてほしい!と主観を押し付けるのではなく、臨機応変な対応力と異文化を受け入れる姿勢が大切だと気づかされました。日本社会が変わるためにも必要な資質ではないでしょうか。
井石さん
山本さんと同感ですが、それでも知らないうちに固定観念にとらわれていることがあります。だから、固定観点=“泡”を打ち破ろうとする “Breaking bubble”という考え方を大事にしたいと思います。自分の当たり前は、他の人にとって当たり前ではないということ。多様性の社会を実現するためには、まず自分の偏見を乗り越えてこそではないでしょうか。
Brotherhood 先生
日本の企業や教育組織について研究したRobert W. Aspinall氏の“Dynamism without Risk”という本があります。そこではこのように書かれています、日本の特徴は安定に向かって皆同じ方向に進んでいく──と。Lehtonen先生もおっしゃっていたましたが、企業も教育組織も、この点についてもう少し考えてほしいと思います。変化はリスクを伴いますが、それでも変わろうと志向することが必要です。
私の専門である、企業の社会的責任(=CSR)やESG、サスティナビリティの観点からお話しすると、日本企業の課題は3点挙げられます。1つ目は、社会的取組みに関し欧米の後追いになってしまっていることです。2つ目が、ダイバーシティ。自分と異なる考え方の人を取り込み、多様な意見を聞く。そういうことができれば、おのずと企業価値も上がっていくでしょう。そして3つ目は、日本では社会問題解決のための起業、すなわち社会的起業が圧倒的に少ないことです。制度、環境、教育など、多方面において起業へのハードルがもっと低くなると良いと思います。
山本さん
先生がおっしゃるダイバーシティの難しさは、少し実感している部分があります。COBBYという学部公認の留学生支援団体に所属していますが、その活動の中で、さまざまな国の留学生と交流する機会があります。連絡ひとつとってもみんなの反応が全く違って……。でも、こうしてほしい!と主観を押し付けるのではなく、臨機応変な対応力と異文化を受け入れる姿勢が大切だと気づかされました。日本社会が変わるためにも必要な資質ではないでしょうか。
井石さん
山本さんと同感ですが、それでも知らないうちに固定観念にとらわれていることがあります。だから、固定観点=“泡”を打ち破ろうとする “Breaking bubble”という考え方を大事にしたいと思います。自分の当たり前は、他の人にとって当たり前ではないということ。多様性の社会を実現するためには、まず自分の偏見を乗り越えてこそではないでしょうか。
Brotherhood 先生
日本の企業や教育組織について研究したRobert W. Aspinall氏の“Dynamism without Risk”という本があります。そこではこのように書かれています、日本の特徴は安定に向かって皆同じ方向に進んでいく──と。Lehtonen先生もおっしゃっていたましたが、企業も教育組織も、この点についてもう少し考えてほしいと思います。変化はリスクを伴いますが、それでも変わろうと志向することが必要です。
Theme2 世界で戦うために立教経営が提供できるもの
Miikka J Lehtonen 特任准教授
Lehtonen 先生
大学では理論を学ぶことが全てではありません。体験が重要なのです。立教経営ではビジネスプロジェクトに挑戦したり留学生と学んだりする授業があって、チームワークを培う機会が豊富です。スキルセットの異なる人たちとチームワークを発揮するためにはどうすればよいか。相手を“学生番号”で扱うのではなく、“個人”という観点で見ることです。その方がトータルで良い成果が期待できるでしょう。
「ビジネスの視点」と「学生の視点」には、しばしばギャップがあります。私たち教育者は、そのギャップを認識し、つねに未来を見据え、求められるスキルを修得できるよう学習内容をチューニングしていく必要があります。
井石さん
ギャップとは、具体的にどういったことでしょうか。
Lehtonen 先生
例えば、SDGsの取り組みを見てみましょう。日本企業は、まずビジネスありきで、後からSDGsをこじつける、そういったフローが多いように見受けられます。これに対して、学生たちの方が純粋に、SDGsを中心に物事を考えているケースが少なくありません。
将来、学生たちが企業で働くとき、こうしたギャップを乗り越えられるように、デザインに関する考え方を伝えています。Design for people=人のためにデザインし、Design with people=人と一緒にデザインすること。企業が一方的にデザインするのではなく、もっと人に焦点を当て、ユーザー視点を考えることが大切です。
村嶋 先生
立教経営を特徴づける2つのプログラムは、まさに人に焦点を当てた学びと言えそうですね。ひとつは「BLP(ビジネス・リーダーシップ・プログラム)で、もうひとつが「GBI(グッド・ビジネス・イニシアティブ)」です。
BLPでは、チームで企業の課題解決に取り組みます。異なる考え方の人たちが、ひとつのゴールに向かって膝を詰めて議論する。その濃密な経験に価値があります。適応力や即戦力が培われるのは言うまでもありません。
もうひとつはGBI。これも学部特有の必修授業です。日本語に訳すと「善き経営」ということになりますね。ただ利益を出すのではなく、持続的に社会に価値をもたらす企業とは何なのか、そういうことをみんなで考えていく授業です。
Brotherhood 先生
二人の先生は、非常に大事なことを言ってくれました。ひとつ付け加えるとすれば、ビジネスの研究を通して、意見を作ることを学んでほしいと思います。私たち教員の使命は、さまざまな機会を創出していくこと。学生が学びたいことを学べる機会を作りたいですね。
大学では理論を学ぶことが全てではありません。体験が重要なのです。立教経営ではビジネスプロジェクトに挑戦したり留学生と学んだりする授業があって、チームワークを培う機会が豊富です。スキルセットの異なる人たちとチームワークを発揮するためにはどうすればよいか。相手を“学生番号”で扱うのではなく、“個人”という観点で見ることです。その方がトータルで良い成果が期待できるでしょう。
「ビジネスの視点」と「学生の視点」には、しばしばギャップがあります。私たち教育者は、そのギャップを認識し、つねに未来を見据え、求められるスキルを修得できるよう学習内容をチューニングしていく必要があります。
井石さん
ギャップとは、具体的にどういったことでしょうか。
Lehtonen 先生
例えば、SDGsの取り組みを見てみましょう。日本企業は、まずビジネスありきで、後からSDGsをこじつける、そういったフローが多いように見受けられます。これに対して、学生たちの方が純粋に、SDGsを中心に物事を考えているケースが少なくありません。
将来、学生たちが企業で働くとき、こうしたギャップを乗り越えられるように、デザインに関する考え方を伝えています。Design for people=人のためにデザインし、Design with people=人と一緒にデザインすること。企業が一方的にデザインするのではなく、もっと人に焦点を当て、ユーザー視点を考えることが大切です。
村嶋 先生
立教経営を特徴づける2つのプログラムは、まさに人に焦点を当てた学びと言えそうですね。ひとつは「BLP(ビジネス・リーダーシップ・プログラム)で、もうひとつが「GBI(グッド・ビジネス・イニシアティブ)」です。
BLPでは、チームで企業の課題解決に取り組みます。異なる考え方の人たちが、ひとつのゴールに向かって膝を詰めて議論する。その濃密な経験に価値があります。適応力や即戦力が培われるのは言うまでもありません。
もうひとつはGBI。これも学部特有の必修授業です。日本語に訳すと「善き経営」ということになりますね。ただ利益を出すのではなく、持続的に社会に価値をもたらす企業とは何なのか、そういうことをみんなで考えていく授業です。
Brotherhood 先生
二人の先生は、非常に大事なことを言ってくれました。ひとつ付け加えるとすれば、ビジネスの研究を通して、意見を作ることを学んでほしいと思います。私たち教員の使命は、さまざまな機会を創出していくこと。学生が学びたいことを学べる機会を作りたいですね。
Theme3 グローバル教育の真価を未来にどういかすか
山本 帆夏 さん
山本さん
ESPという国際経営学科独自の授業で「日本企業が海外進出するための経営戦略を提案する」というプロジェクトに取り組みました。非常にハイレベルなテーマでしたが、課題の目的を明確にすることで達成することが楽しいと思えるようになりました。その意識の変化が成長だと感じています。
村嶋 先生
この授業は、all Englishで行うことも大きな特徴ですね。
山本さん
英語“を”学ぶのではなく英語“で”ビジネスを学ぶということは、私にとってとても大切な経験になりました。プレゼンテーションの機会も多かったので、語彙力、表現力が鍛えられ、自分の英語力を使ってどのように人に物事を伝えるか、どうすれば説得力が上がるのか、ただ文法や単語を記憶するのではなく、英語の応用力が身についたと感じます。
Lehtonen 先生
すばらしいことですね。思い描いている将来のビジョンはありますか。
山本さん
まだ将来の目標として、はっきりとこの職に就きたいという志望はありませんが、世界とつながりながら会社に貢献していきたいですね。どの企業に勤めても、その製品やサービスを世界レベルにまで向上させられる人材になることが目標です。
ESPという国際経営学科独自の授業で「日本企業が海外進出するための経営戦略を提案する」というプロジェクトに取り組みました。非常にハイレベルなテーマでしたが、課題の目的を明確にすることで達成することが楽しいと思えるようになりました。その意識の変化が成長だと感じています。
村嶋 先生
この授業は、all Englishで行うことも大きな特徴ですね。
山本さん
英語“を”学ぶのではなく英語“で”ビジネスを学ぶということは、私にとってとても大切な経験になりました。プレゼンテーションの機会も多かったので、語彙力、表現力が鍛えられ、自分の英語力を使ってどのように人に物事を伝えるか、どうすれば説得力が上がるのか、ただ文法や単語を記憶するのではなく、英語の応用力が身についたと感じます。
Lehtonen 先生
すばらしいことですね。思い描いている将来のビジョンはありますか。
山本さん
まだ将来の目標として、はっきりとこの職に就きたいという志望はありませんが、世界とつながりながら会社に貢献していきたいですね。どの企業に勤めても、その製品やサービスを世界レベルにまで向上させられる人材になることが目標です。
井石 萌佑理 さん
井石さん
立教経営はグループワークが多く、メンバーのスキルセットや価値観、意見、全てを組み合わせて共通解を見つけていきます。そのプロセスでおのずと視野が広がり、自身の可能性にも気づくことができました。多様性とは、一人ひとりのスキルがあって成り立っているもの。そう認識できたことは、私にとって非常に大きな意味があったと思います。
Lehtonen 先生
井石さんは、私が研究している戦略的デザインについても熱心に学んでくれていますね。
井石さん
はい、将来はデザイン分野で働きたいと考えています。Lehtonen 先生のもとで学ぶデザインは、他者視点に立ってより良い社会を創ることだと理解しています。そういった点では、経営に近い仕事かもしれません。自分視点でアウトプットするのではなく、他者視点を軸にすること。そして、人々の不満を解消し、より善い社会をつくること。それが、私がデザイナーとして携わりたい仕事です。
Brotherhood 先生
世界の未来は、まさに山本さんや井石さん次第だと思います。今回、二人が持つビジョンや可能性を知って私はとても安心していますし、頼もしく感じています。
村嶋 先生
これからも失敗を恐れず、いろいろなことに挑戦してほしいと思います。状況が許せばいろいろな国を旅行して、世界の多様性に浸ってほしいですね。その経験が、自分の価値観や考え方を形成する際に役立つかもしれません。
幸せの形は多様です。想像以上に活躍できる場はたくさんあるし、その機会もたくさんあります。それを胸に留めて、安心して楽しく学んでほしいと思います。これからも私たちが全力でサポートしていきますね。頑張ってください。
立教経営はグループワークが多く、メンバーのスキルセットや価値観、意見、全てを組み合わせて共通解を見つけていきます。そのプロセスでおのずと視野が広がり、自身の可能性にも気づくことができました。多様性とは、一人ひとりのスキルがあって成り立っているもの。そう認識できたことは、私にとって非常に大きな意味があったと思います。
Lehtonen 先生
井石さんは、私が研究している戦略的デザインについても熱心に学んでくれていますね。
井石さん
はい、将来はデザイン分野で働きたいと考えています。Lehtonen 先生のもとで学ぶデザインは、他者視点に立ってより良い社会を創ることだと理解しています。そういった点では、経営に近い仕事かもしれません。自分視点でアウトプットするのではなく、他者視点を軸にすること。そして、人々の不満を解消し、より善い社会をつくること。それが、私がデザイナーとして携わりたい仕事です。
Brotherhood 先生
世界の未来は、まさに山本さんや井石さん次第だと思います。今回、二人が持つビジョンや可能性を知って私はとても安心していますし、頼もしく感じています。
村嶋 先生
これからも失敗を恐れず、いろいろなことに挑戦してほしいと思います。状況が許せばいろいろな国を旅行して、世界の多様性に浸ってほしいですね。その経験が、自分の価値観や考え方を形成する際に役立つかもしれません。
幸せの形は多様です。想像以上に活躍できる場はたくさんあるし、その機会もたくさんあります。それを胸に留めて、安心して楽しく学んでほしいと思います。これからも私たちが全力でサポートしていきますね。頑張ってください。
※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。